21-1 

静けさについての3つのお題(その1)

  沈黙だけが場を満たし

  声なき歌を唇に乗せ

  ただ密やかに在りて

 

 

21-2 

静けさについての3つのお題(その2)

  聞こえるものは雪の音だけ

  痛いほどの静寂

  澄み透るような静けさ

 

 

21-3 

雫についての5つのお題

  山の雫にしとどに濡れて

  月の雫に惑わされ(月の雫=霧)

  頤の雫(おとがいのしずく)

  菊の雫をあの人と

  末の露本の雫(すえのつゆ もとのしずく)

 

 

21-4 

青についての5つのお題(その9)

  青葉の頃に

  青春真っ盛り

  青臭い考え

  恋せよ青少年

  真っ青大慌て

 

 

21-5 

黄についての5つのお題(その1)

  黄雲を眺め(こううん=一面に実った稲)

  黄塵にまみれ(こうじん)

  黄梅の雨に濡れる(こうばいのあめ=梅雨)

  黄粱一炊の夢(こうりょういつすいのゆめ=邯鄲の枕:かんたんのまくら)

  黄泉平坂を越えて(よもつひらさか)

 

 

21-6 

黄についての5つのお題(その2)

  嘴の黄色いひよっ子

  黄色い声を背に受けて

  黄金時代を夢に見て

  黄緑色のまっただなかで

  黄昏時の空見上げ

 

 

21-7 

黄についての5つのお題(その3)

  黄昏草の仄白さ(たそがれぐさ=夕顔)

  黄昏鳥の鳴く声に(たそがれどり=ホトトギス)

  地獄の炎、硫黄の臭い

  黄なる泉に身をひたし(黄なる泉=あの世)

  黄泉路を辿る(よみじ)

 

 

21-8 

黄についての5つのお題(その4)

  萌黄色満ちて(もえぎいろ)

  偽りの黄金

  黄雀風渡る(こうじゃくふう)

  黄砂に吹かれ

  黄鐘の寒き朝(こうしょう=陰暦十一月)

 

 

21-9 

紅についての5つのお題(その1)

  白き頬、薄紅に染め

  口紅の色ほのかに

  紅の涙を流し

  紅蓮の炎の只中で

  紅唇の笑み

 

 

21-10 

紅についての5つのお題(その2)

  降りしきる紅雨(こうう)

  紅鏡を仰ぎ見て(こうきょう=太陽)

  紅茶の香りに包まれて

  夕紅に染まる部屋(ゆうくれない)

  紅炉上一点の雪(こうろじょういってんのゆき)